2015年のパリ協定で「2020年以降の地球温暖化対策に、すべての国が参加」「世界の平均気温上昇を、産業革命から2度未満、出来れば1.5度に押さえる」「今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」 ことが採決されました。そして日本の温室効果ガスの削減目標は、2030年までに26%削減(2013年度比)です。

この目標を達成するために国、自治体、企業、団体などが様々な取り組みを行なっています。それらの技術や製品、情報などが、3/12-15に開催された「2019地球温暖化防止展」で展示されました。会場の様子と展示ブースを数回に分けてレポートしていきます。今回は「地中熱」編です。

地中熱利用促進協会ブース

天候にも時間帯にも左右されず、日本中どこでも、いつでも利用できる自然エネルギーとして「地中熱」が注目されています。

地中熱とは?

深さ10mくらいのところの地中の温度は、年平均気温にほぼ等しくなっています。四国九州の南部で20℃、北海道で10℃、東京や大阪では17℃程度です。

一方、四季のある日本では、冬と夏に地上と地中との間で10℃から15℃もの温度差が生じています。つまり、温度が一定である地中は冬には温かく夏は冷たい。地中熱の利用ではこの温度差に着目して、効率的に熱エネルギーの利用を行っています。

地中熱利用システムの長所

  • 日本中どこでも、いつでも利用できます。
  • 節電、省エネとCO2 排出量抑制ができます。
  • 通常のエアコン(空気熱源ヒートポンプ)が利用できない外気温 -15℃以下の環境でも利用できます。
  • 地中熱交換器は密閉式なので環境汚染の心配がありません。
  • 冷暖房に熱を屋外に放出しないため、ヒートアイランド現象の緩和に寄与します。

図1 青森県の公共施設(石上ほか、2010)

地中を熱源とするヒートポンプシステムでは、地中と外気との温度差が利用できるため、とても効率的な運転が出来ます。その結果、大きな節電効果とCO2削減効果をもたらします。省エネ対策及び地球温暖化対策に、地中熱ヒートポンプシステムの導入は極めて効果的です。

図1では、建物の冷暖房のほか歩道の融雪に地中熱を利用している青森県弘前市の施設で、地中熱と従来型のエネルギー利用を比較したときの、一次エネルギー消費量とCO2発生量を示しています。ここではエネルギー消費量は在来システムとの比較で、46%減となっており、またCO2発生量は50%減となっています。

ヒートアイランド現象を抑制

環境保全の面で地中熱ヒートポンプのもつもうひとつの優れた点は、夏季の冷房排熱を大気中に放出せず地中に吸収させることによるヒートアイランド現象の抑制効果です。なお、地中熱の利用では、夏季には地中に放熱されますが、温熱を利用する冬季にはその地中から採熱しますので、適切な設計と運転により、年間通してみると地中での熱収支バランスがとれます。

普及が期待されている地中熱利用

地中熱利用ヒートポンプシステムは、欧米では1980年代から普及し始め、米国ではすでに100万台以上が利用されています。欧米諸国や中国では、国のエネルギー政策で地中熱が取り上げられ、助成制度がありますが、日本では平成22年にエネルギー基本計画に書き込まれるまでは、エネルギー政策で認知されていませんでした。平成23年度からは経産省の補助金が使えるようになり、これからの普及が期待されています。

参考・出典:地中熱利用促進協会